人を操るバイアス30選!行動心理経済学の実践マーケティング戦略事例から簡単な使い方
動物が本能レベルで埋め込まれている「常同行動」を知れば簡単に人を操ることができる。だからこそ「行動経済学」を身につけよう。
今現在、これまで学んで、実際に使ってよかった「マーケティング戦略」や「行動経済学の効果」を整理している。
本記事では「これよかった!」「これ使えた!」という戦略から、実際に得られた効果を具体的にまとめる。
遺伝子レベルで組み込まれた行動パターンで操る
人が本能的に組み込まれている「行動パターン」を知れば、人を操ることもできる。「行動経済学」や「行動心理学」といった学問として確立されている分野でもあるし、「マーケティング」や「マーチャンダイジング」としてビジネスでも使える「知識」でもある。
「知らず知らずの内に操られていた」「選んだら勝手にたどり着いた」と誘導されてしまわぬよう知っておくべき行動パターンをまとめる。
禁断の使えるマーケティング戦略として、人の行動パターンを紹介する。
1 認知バイアス
「いままでの経験からこうだ」とか「直感的にこれだ」と誤った情報や先入観によって「認知に歪み」が生じてしまうことを認知バイアスという。
「認知バイアス」とは、行動経済学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーらが提唱する考え方。人々が知覚する情報や判断する際に、「経験」や「直感」から不正確な情報や偏向的な見方をすることがあることを示した。
「思い込み」「先入観」「経験則」「直感」など素早く判断することによる偏り。
2 単純接触効果(ザイオンス効果)
単純に「接触する」機会が増えるほど「なじみ」を感じる。心理学者ロバート・ザイアンスさんは「無作為の刺激の反復とそれに対して人々が抱くようになる好意」があることを研究したことで有名。ザイオンスさんの名前をとって「ザイオンス効果」ともいわれる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?接触する機会が多いモノに好意を抱くのは「あらゆる動物」に当てはまること。危険が多い時代、これまで出会したことがない生物と対峙することは死へのリスクがあった。生き延びるためには「新しいモノ」よりも「なじみのあるモノ」を選択する方が効率がいい。だからこそ、単純に出会った回数が多いなじみあるモノを好む傾向がある。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ テレビCM 「テレビで何度も見たことがある」モノを無意識のうちに選んでしまうことがある。テレビCMで流れていた洗剤やお菓子を知らず知らずのうちに買ってしまうパターン。 最初はおもしろくないと思っていたYouTubeやTwitterの投稿も何度か見ていくうちに「何かいいかも」と気になってくるパターン。 あまり興味がなかった異性も隣の席なって何度か話すうちに仲良くなることもある。他にも同じ電車で同じ時間に同じ車両にいつも乗るあの人みたいな接触回数が増えることによって気になる存在になるアレ。 |
❏ 使い方 |
実例☑︎ 見込み客に何度も触れてもらう機会をつくる |
3 返報性の原理
返報性の原理とは、人があなたに対して優しく接してくれると、あなたもまたその人に対して優しく接するという原理。これは、人間関係において、相互に優しさや信頼を示すことで、より良い関係を築くことができるという考え。
例えば、人からプレゼントをもらったら、何か「お返し」しなければと感じるあの心理。
この原理はロバート・チャルディーニさんが著書「影響力の武器」で提唱してることでも有名。日本のマーケティング界隈でバイブルと言われるレベルの名著。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?何かをもらうとお返しがしたくなる心理はかなり強い効果がある。 アメリカのニューヨーク州で行動分析学者らが行った「レストランのチップの額を調べた」研究によると、食後にチョコレートを渡したテーブルは、チョコレートを渡さなかったグループよりも、3.3%チップ額が上昇したという結果になった。 ウエイターが会計前に、お客様にチョコレートを1つ渡しただけで、チップの額が上がるのは効果が絶大。 さらに、チョコレートを2つ手渡しした場合、チップの額は14.1%上昇。もっというと、チョコを1つ渡した後に、ウエイターがそのテーブルを離れて、もう一回テーブルに戻ってきて「特別にもう一つどうぞ」と渡した場合は、21.3%も上昇した。 要するに、この研究で言えるのは、人はチョコレートという「プレゼント」をもらうだけで、満足度が上昇し、チップという「お返し」をしたくなるという話。この原理をビジネスに応用しているサービスはたくさんある。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 初回無料のトレーニングジム |
❏ 使い方 |
実例▷ 【事例】ギフト経済とは?プロセスエコノミーは返報性の原理マーケティング戦略? | Abroader(アブローダー) ■ 代表的ヒューリスティック |
4 社会的証明
他の人たちが何を正しいと考えているかを基準に判断することを社会的証明という。「世の中で人気の商品だからいい」とか「社会が認めているから良いモノだ」と思う心理。
例えば、行列ができている。ラーメン屋はおいしいに違いないと感じるあの感覚。多くの人が並んででも食べたいと思っているお店だからこそおいしいはずだと思ってしまう。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?社会が認めてるモノは良いモノである「確率」が高い。欲しいモノを選ぶ時、自分で判断するよりも、みんなが選んでいるモノを選ぶ方が少ない思考量で決めることができる。 思考力が乏しい人や自己の判断基準を持たない人ほど社会的にいいと証明されたモノを素直に手に取る。 特に日本人は「空気を読むこと」に長けているからこそ、この社会的証明の原理を強く受けやすい。「同調圧力」が強い文化圏だからこそ、「みんなが持っているモノ」や「みんなが使っているサービス」に弱い。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 人気で行列ができているお店 あえて行列ができやすいお店をつくるのもマーケティング戦略としてよく使われる。人気があるお店だと錯覚させるため、あえて行列を作りやすく作る。 特に、歩いてる人に目立つように、お店の外に列ができやすいような狭い店を作ったり、券売機を外に置くことで一時的に列ができているように見せるお店もある。 他にもテレビに出ていた人やお店は強い。今でも「テレビで紹介されるくらいすごい人」だと思う人も多い。だからこそ、あえてテレビに出るために行動する人もいる。 |
❏ 使い方 |
実例☑︎ SNSのフォロワーを増やす 個人でできる戦略はSNSのフォロワー数を武器にプチインフルエンサーとして活動すること。単純にフォロワー数を獲得するために「プレゼント企画」や「お金配りキャンペーン」をする方法もよく使われている。 もっというとSNSフォロワーを購入してフォロワー数を増やす人や企業もいる。最近、Twitterでは表示回数がわかるようになった。フォロワー数が100万人近くいるにも関わらず、投稿のほとんどが1万回も見られていないと話題になった。 いずれにせよ、目の前のフォロワー数や人気だと見せることで勘違いする人も多いからこそ、戦略的に取り入れるのも方法の一つ。 |
5 希少性
行動経済学者のロバート・チャルディーニさんがいう「希少性」とは、資源や時間が限られているとき、人はモノの価値をより高く見積もるというもの。
「数に限りがあるモノ」「今にも売り切れそうな状態のモノ」を欲しいと思うあれ。
限定品や期間限定キャンペーンなど「今しか買えない」「希少で価値があるモノ」と判断させるマーケティング戦略としてもよく使われている。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?例えば、何個でも買える商品よりも「残り1つ」になった商品であれば、残り1つしかない商品を買おうと思う心理が働く。 よく「限定品」や「あと1つで完売する」ような。風がかけられた商品ほど人が欲しくなってしまう。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 地域限定品 |
❏ 使い方 |
実例ロバート・チャルディーニ |
6 プロスペクト理論
プロスペクト理論は、人々が「リスクと獲得」に関しての「認識と判断」において異なる傾向をしめす理論。
要するに「頭では損をすることがわかっていても、感情に任せて間違った判断をする」イメージ。例えば「このお菓子を食べると太る」とわかっていてもリスクをおかしてついつい食べてしまうあれ。
人は状況や条件によって期待値を歪めて判断してしまう。目の前の情報から確率的に判断できず、主観を含めて判断してしまう。
さらに人々は獲得と損失に対する感情に基づいて、貪欲や慎重な選択をするようになる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?「人は失うことを嫌う」。なかでも「損失回避」は、人々が損失を避けようとする傾向を示す概念。損失回避という傾向は、人々がより安全な選択肢を選ぶようになることから、プロスペクト理論に含まれる一部。 この傾向は、損失に対する強い不安感や不満を引き起こすことから、人々はより安全な選択肢を選ぶようになるとされている。 損失による痛みは、幸せの2倍も影響力があるという。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例投資家は、投資による損失を避けようとする傾向がある。資産が失われてしまうことを恐れ、思うような判断ができないことがある。 消費者は、新しい製品を購入する前に、その製品の価値を判断する。消費者は、安定した価値を持つ製品を選ぶ傾向があるが、高リスクの高リターンの製品は選ばない場合もある。 仕事の選択に際して、現在の仕事よりも安定した仕事を選ぶ傾向がある。 |
❏ 使い方 |
実例☑︎ 「この価格での販売は23:59まで」のような時間を区切った販売。「明日になれば値段が高くなるので損をする」という損失回避が働く ダニエル・カーネマン |
7 類似性の原理
人々は、類似する人やグループと親密な関係を築くことで、それらと協力する傾向があるという理論。
このような協力が生まれる理由としては、類似する人やグループを信頼しやすいという認識や、類似する人やグループと共通の価値観や考え方を持っているという感覚があるため。
例えば、「同じブランドが好きな人」や「価値観が似ている人を好む」あの感じ。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?この類似性の原理は、マーケティングやセールスなどにおいて、類似する顧客やグループをターゲットとすることで、協力を促進する手法として使われる。 「韓国アイドル好きな人は、韓国っぽいカフェによくいったり、韓国コスメや雑貨のお店にもよくいく」というような類似する「共通点」から販売促進を促す。 また、政治運動や組織の運営においても、類似する人々を結集することで、目的を達成するための力を強めるために使用される。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例AmazonやTikTokの「リコメンド機能」も類似性。この商品を買った30代男性なら、このアイテムも欲しがるだろうという何千何万ものデータから「おすすめ品」を提示する。 提示された顧客側は「これこれ!これが欲しかったんだよ」と潜在ニーズを満たしてくれる。似ている人の行動パターンをデータ収集して販売促進につなげる企業も多い。 |
❏ 使い方 |
実例個人でよくみるのは「SNSのフォロワー集め」。自分と考えが「似ているフォロワー」が集まってくるのと同じ。 仕事に対する価値観や私生活が類似するからこそ、インフルエンサーを応援したくなる気持ちが芽生える。 自分と似た人が集まるからこそ、自分が大事にするら価値観や主観をシェアするのは大事。 |
8 一貫性
「一貫性の原理」とは、行動経済学者ロバート・チャルディーニが提唱する考え方で、人々が自分の行動と言葉が一致していることを重視するというもの。
この原理に基づいて、人々は自分の言葉に従って行動するよう強制力が働く。また、一貫性を保つことによって、他人からの信頼と尊敬も得られる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?例えば、習慣もその一つ。朝起きて歯磨きをする習慣がある人は、365日、基本的に毎日歯を磨く。習慣化してしまった一貫した行動パターンを続けるのは難しいことではない。 逆に、習慣になっていない行動を続けるのは難しい。ジムに入会したものの、翌日に筋肉痛になってから、全く行けていないことはよくある。 一貫した行動や言動が習慣になれば、毎日続けることができるが、習慣化するまでに時間と労力がかかる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ シリーズ化した映画やアニメ 第一シリーズがおもしろかった映画やアニメは続けてみたいと思う心理。逆にハマらなければ継続してみない。 ☑︎ サブスクリプション 定期購読サービスは一貫性をよく体現している。一度契約したサービスは継続してお金を払い続けてしまう。特にクレジットカードなど自動引き落としのサービスは知らず知らずのうちに支払いが終わってしまうので消費者は支払いの痛みをともなわずに継続する。 |
❏ 使い方 |
実例☑︎ 定期購読サービスをつくる サブスクリプションモデルのサービスをつくるのも方法の一つ。一過性の高額課金型のサービスよりも月額課金型のサービスにすることでお得感を引き出せる。 ジムの会費、新聞購読料、有料メールマガジンなど購読契約までのハードルはあるものの、一度継続すれば続けてしまいがち。 一度の課金型か定期購読課金型か悩む場合は、平均購読継続月数から平均課金額を計算して値段設定するのも方法。 |
9 権威性
「権威性の原理」とは、行動経済学者ロバート・チャルディーニが提唱する考え方で、人々は信頼できる権威的な存在からの指示に従う傾向がある。例えば、専門家や役員、先生や医者など。
権威的な存在からの指示に従うことが望ましいとされる場面が多いため、間違った判断をしても正しいと判断してしまうこともある。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?権威がある人の話を受け入れやすい。例えば、先生の話や医者がいうことを鵜呑みにしがち。小学生の頃、先生がいうことは正しいことだと印象付けられていた。きちんと指導に従うことが「良い生徒」だと評価されるからこそ、権威に従うことが正しいことだと意識づけられる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 実績や成績を見えるようにする 権威の実績を見やすい場所やよく触れるところに配置する。例えば、賞状や資格など高価に見える額縁にいれたり、公式サイトに権威が評価されているデザインを組み入れる。 ☑︎ 〇〇賞の権威ビジネス 「ミスユニバース」や「ベストコスメ賞」など受賞できるコンテストを開催するビジネスもある。例えば、ベスト〇〇賞に選ばれるためには、審査の申し込みに数万円、二時審査に十数万円、最終審査に数十万円と都度課金しなければ参加できない賞レースもある。さらに受賞を掲載するのに年間ロゴ使用料がかかるなど権威性を示すビジネスもある。 ☑︎ テレビ出演や本を出版する 「テレビに出ている人はすごい人」「本を出すほど頭がいい人」と権威に感じる層は一定数いる。わかりやすい権威性ほど認知バイアスがかかる。 |
❏ 使い方 |
実例☑︎ 権威性のある実績を積み上げる 「〇〇資格保有」「大手〇〇会社出身」「年商〇〇」「〇〇賞受賞」「テレビ出演歴」など権威を示す実績を積み上げ、見えるように発信するのも方法の一つ。人は話の中身よりも「誰が話すか」が重要だと思うため。 ■ 影響力の武器 |
10 アンカリング効果
「最初に見た数字が大きな効力になる」マーケティング。人々が判断や決定をする際に、最初に得た情報をアンカーとして過度に依存する傾向を指す。ある事象の評価が、与えられた情報に引きずられて影響される。
このバイアスは、多くの異なる文脈で判断や決定に影響を与え、人々がアンカーに過度の重みを置くことになることがある。ダニエル・カーネマンやトベルスキーらのいう認知バイアスの一種。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?ドイツの心理学者トーマス・マスワイラーとフリッツ・ストラックは、アンカリングにおけるこうした連想一貫性を示す非常に説得力のある実験を行った。 参加者に「ドイツの年平均気温は摂氏二〇度より高いでしょうか、低いでしょうか」または「ドイツの年平均気温は摂氏五度より高いでしょうか」と質問をした。 結果、「20℃より高いか低いか」聞かれたグループは15℃程度を連想した。逆に「-5℃より高いか低いか」聞かれたグループは10℃程度を連想した。 最初の質問にある数字の「20」と「-5」が「アンカー」となり、これらの数字を基準としてしまった結果、連想する数値がズレるという結果が起こる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 価格交渉をするアンカリング 値段を提示するさい、事前にアンカーとして数値を見せる。交渉前に数値を提示することで、この数値を基準に考える。 |
❏ 使い方 |
実例■ 実践行動学 |
11 利用可能性ヒューリスティック
「利用可能ヒューリスティック」とは、人々が知っている情報と経験をもとに、最も簡単かつ迅速な方法で問題を解決するという意思決定を指す。
このアプローチは、正確な答えを見つけることよりも、時間や負担を節約することが目的であり、実際の生活において頻繁に使用される。適切な解答を即座に導くこと。
経験則で決めたヒューリスティックで生じる判断の偏りが認知バイアスとなる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?過去の経験をイメージさせ意思決定を促す。事例をどれだけイメージできるかで、リスクが現実のものになるか判断し不安を抱きやすい。地震や台風などの災害、コロナやインフルエンザなどの病気を想起させることで判断をうながす。
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❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 未曾有の災害後の保険販売 |
❏ 使い方 |
実例■ スタンフォード大学の共感の授業――人生を変える「思いやる力」の研究 |
12 現在バイアス
「目の前のこと」「現在起きていること」に意識が引っ張られることはないだろうか。例え、未来に大きな利益が得られようとも、目先の利益に手が出てしまうアレ。
「現在バイアス」とは、行動経済学者ダニエル・カーネマンが提唱するバイアスの考え方から生まれた。人々が現在のことに対して過大な重視をし、将来的なことに対して相対的に重視をしない傾向があるということを指す。
今、目の前にあるメリットを大きく感じ、この後に起こるメリットを小さく感じてしまう。人々が現在的な利益や満足を優先することにより、将来的な利益や満足を見落としがちであることを示す。
現在バイアスがあると、「目の前のこと」に注力しすぎるため、正しい判断や投資などに対する決定をすることが難しくなる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?例えば、ダイエットの食事制限。「痩せたい」と思って食事制限はするものの、ついつい食べてしまう。頭では自分の理想とする将来的なメリットが考えられるものの、目の前にあるおいしそうな食べ物にツイ手が伸びてしまう。 人は、目の前にあるものを大きく捉え、将来にあるそれよりも大きなメリットを見失ってしまう。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 「今すぐ使える」「明日から効果が出る」 すぐに効果がでるサプリメントや目の前で結果がでていることに人は飛びつく。 ☑︎ ガマの油売り 「さあさあ お立ちあい、御用とお急ぎでなかったら、ゆっくりと聞いておいで」と始まる「膏薬」の商人の販売方法も効果がある。目の前で傷が治るパフォーマンスをすることで飛ぶように薬が売れた。 ☑︎ 顔が見えやすい敵 目の前の敵をつくることでライバル心が芽生える。敵がいる場合、目の前の敵を倒そうと盲目になる。逆に、敵が見えづらい場合は関心が薄れる。 ☑︎ 確率的被害への希薄 地震、気候変動など起こりうるものへの確率からイメージしづらい。また、共有地への各々の見解がことなること。気候変動や領地争いなど他人事になりがち。 |
❏ 使い方 |
実例☑︎ 結果や効果を見せる |
13 ナッジ理論
動作を誘発させるシグナル。相手に選択肢を残しつつ、より良い選択を自発的にとらせる理論。2017年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者リチャード・セイラーが提唱した。
直訳すると「ひじで軽く突く」という意味。行動経済学や行動科学分野において、人々が強制によってではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法を示す。
例えば公衆トイレにあるトイレマークを見ると、無意識に男女にわかれる。男性はこっちで、女性はこっちと自然に行動に移してしまう。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?「無意識に行動しやすい設計」は効果がある。公衆トイレのマークやお化け屋敷の迷路など、進むべき場所や順序をわかりやすく示すことで、人々の流れを生む。 ちょっと手に取りたくなるような仕掛けや行動を流したくなる。仕組みを組み込むことで、消費者が購買行動に移りやすくなる。特に人は楽な方に流れる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ IKEAの周遊ルート ☑︎ サブスク会員 |
❏ 使い方 |
実例顧客が楽をして行動するパターンを予測する。どうすれば、気軽に行動を起こしようになるのか、意識しながらサービスを組み立てるのは良い。 「人が楽になるためにはどうしたらいいか」を考えればいい。 ■ 実践行動経済学 完全版 リチャード・セイラー、キャス・サスティーン キャス R サンスティーンスラッジ 不合理をもたらすぬかるみ |
14 代表的ヒューリスティック
代表的な「ステレオタイプ」にもとづく意思決定。「あの人は白衣を着こなしているから医者だろう」とか「外国人だから英語を話せるだろう」という典型的なイメージから判断すること。
世の中では「思い込み」から判断されることは多い。「ヤンキーだから喧嘩っ早い」「見た目がギャルだから勉強ができない」と見られるのも同じ。代表的なイメージが判断材料になる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?代表的なイメージづけを狙いながら、相手に与えたい印象を自らつくることができる。例えば、「紳士的な印象」を与える代表的な服装として、サイズ感の合うスーツで身なりを整えるのも方法の一つ。 他にも、可愛らしい印象を与えるためにフリフリのドレスを選んだり、資産家である印象を与えるためにハイブランドで身を包んだりとイメージは戦略に使える。「代表的な」印象を意識するだけで、相手の捉え方も変わる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ インテリア 店内のインテリアもヒューリスティックを意識できる。高級なハイブランドほど、モノが少なく空間が広い洗練された雰囲気を持つ。ファストファッションほど、アイテムが所狭しと並んでいる。 高級なレストランほど小綺麗で、大衆居酒屋ほど人との距離が近い。 |
❏ 使い方 |
実例相手に与える印象を意識して見た目を変える。自分がどんな風に見られたいか、どんな印象付けをしたいかでファッションを変化させる。 ウェブサイトやSNSも同じ。ターゲットに刺さる色使いや雰囲気づくりをすることで、自分が求める顧客と共感できる。 ■ ファスト&スロー |
15 確証バイアス
確証バイアスとは、自分の信念や思考をベースにした思い込み。自分の考えが正しいことを基準に考えるため、他人の意見や情報を無視してしまうことをいう。行動経済学者のピーター・ウェイソンが提唱する考え方。
歳を取れば取るほど若者の話が聞けなくなるあれ。自分の経験や知見を鵜呑みにしていまい、新しい情報を無視していまう。確証バイアスは、人々が自分の意見に偏りがちであることを示す。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?確証バイアスがあると、他人の意見や情報を受け入れない。逆を言えば、信じることを深掘りすれば陶酔してしまう傾向もある。 思い込みを補填する情報を与え、正しい判断や決定ができない場面を作り出す方法もある。 例えば、占いの恋愛相談も一つ。相手も自分のことが好きであると思いたい人に対して、コールドリーディングをしながら情報を聞き出し、思い込みを深める施術もできる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ コーチング ☑︎ 洗脳 |
16 後知恵バイアス
物事が起こったあと、あたかも「予測していたこと」「私はずっと知っていたこと」だと思い込むこと。例えば、「あの人がビジネスに失敗するのは目に見えていた」「あのお店は〇〇だから潰れたんだ」と結果をあたかも予測できたかのように後から回想する。
後知恵バイアスとは、過去に起きたことを実際よりも予測可能だったと考える。
これまでの出来事は、現在から回想できるも。ただ、過去の時点では予測できない。未来のことは誰にもわからないにもかかわらず、過去を語るとき「必然だった」と都合よく解釈する。
後から都合よく物語をつくってしまう。プロセスエコノミーも後知恵バイアスから上手く練られる。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?人は上手くできたストーリーに惹かれる。成功までの過程をビジネスとして見せるマーケティング手法もよく使われている。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ プロセスエコノミー ☑︎ 自叙伝 ☑︎ ブログ |
❏ 使い方 |
実例過去の出来事をおもしろいストーリーとしてプロセスを提供する。 ■ セレンディピティ 点をつなぐ力 |
17 ハロー効果
目立つ特徴によって認知が左右される効果。「有名人が宣伝しているからいい商品」「口コミが多いから美味しい店に違いない」と一部の特徴で判断してしまう。
一つの特徴に引っ張られて考えてしまうため、ポジティブにもネガティブにも左右される。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?ポジティブで人気な芸能人をイメージとして起用したサービスや商品が購買行動を促進させたり、不祥事を起こした有名人の影響でサービスの人気が落ちることもある。 一部で判断されるハロー効果の影響力を理解してマーケティング戦略を立てる必要がある。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 口コミ数を増やす施策 |
❏ 使い方 |
実例権威性や社会的証明の原理原則と同じ感覚。肩書き、ブランドらしさなど「どのように見られたいか」を意識する。 ブランドイメージづけを強化するために、サイトやSNSなどデザインを整えるのも一つの方法。綺麗なデザインや質の高い投稿に共感する人も多い。 |
18 感情ヒューリスティック
感情経験から好き嫌いで印象が変わる心理効果。人は熟考や論理的思考をほとんど行わずに、好きか嫌いかだけに基づいて判断や決断を下しがち。
「あの人は好みだから応援する」「あの政治は印象がいいから投票する」という具合の感情による判断。
人は外見で判断する。特に、政治に無関心でテレビ好きの人は、政治にくわしくテレビをあまり見ない人の3倍も「顔の印象に基づく能力」に影響されやすいといわれている。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?外見を磨くことで良い印象を与えることができる。初対面や最初の印象をよくするデザインをすることでビジネスにも役立つ。 人の印象のみならず、企業のSNSやホームページなど顧客と接するサービスの見た目や雰囲気をターゲットに寄せることマーケティング手法の一つ。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 大衆に人気の人をアンバサダー起用する企業 |
19 現状維持バイアス
人は全般的に現在の状況に固執する傾向を示すことを現状維持バイアスという。ウィリアム・サミュエルソン、リチャード・ゼックハウザーらがこの現象を名付けた。
例えば、満員電車で通勤する初日は、ものすごくストレスがかかるものの、慣れてしまえば当たり前となってしまう。現在の状況に慣れてしまうことで、わざわざ新しいものを取り入れる必要がないと維持してしまう傾向。
「新しいこと」「従来のやり方を変えること」にコストがかかる。だからこそ、新しいモノを嫌う人も多い。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?新しいことや変化が起こることに敏感になるため、今あるポジションを維持しようとする力が働く。 わざわざ新しいことを起こしてまで変化させようと思わないため、継続する契約は効果がある。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ サラリーマン ☑︎ サブスクリプションモデル |
❏ 使い方 |
実例 |
20 バンドワゴン効果・同調
「空気を読むこと」が長けている日本の文化があるからこそ、「同調」はかなり大きなマーケティング戦略になる。
「バンドワゴン効果」とは、ある選択肢を選んでいる状態が、その選択肢を選ばせる者に影響すること。
「みんなが選んでいるからコレにする」「選んでいる人がいるからこっちにする」という同調する働きがある。だからこそ、「同調」はマーケティングにおいてかなりの効果を発揮する。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?同調圧力は日本人にとってかなり効果がある。理由は、他者からの情報という「口コミ」効果であり、さらにピア・プレッシャーという「集団からの圧力」もある。 田舎でよくある話が「〇〇のスーパーはお肉が安くて美味しい」と口コミ評判になれば、その地域で品薄になるくらい広まるアレ。 もっというと、「〇〇さんは地域行事のゴミ拾いに参加しない」と悪い噂が広まれば、集団からの嫌がらせや村八分になるアレもそう。「同調」の効果は、島国の日本だからこそ、欧州や欧米よりも強い効果を発揮する。 日本社会の特徴は「閉鎖性」と「同質性」があると『同調圧力の正体』の著者、太田肇さんは述べられている。日本は地理的に島国であるため閉鎖的になります。歴史的に見ても「鎖国時代」や「侵略が少ない」ことも一つ。さらに、移民が少なく単一民族であるが故に、閉鎖的で同質を好む構造になる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ みんなが持っている |
❏ 使い方 |
実例☑︎ 口コミ評判をよくするマーケティング 例えば「Amazonのレビュー」を促したり、「口コミ評判であることを示す」方法。さらには「YouTubeのコメント欄」や「Twitterのリプライ欄」を読むユーザーも多いため、コメント欄を整えたり、Twitterのリプライ欄に宣伝を加える人も多い。 具体的には、Amazonのベストレビューに対してプレゼントを特典して高評価レビューを増やす。YouTubeのコメント欄に「チャンネル登録やコメントを促すコメント」を固定する。バズるツイートの型を作った後に、自らリプライ欄でアンケートと宣伝を促す投稿を紐づける。 他者の意見を重視する共同体だからこそ、意見をみえるカタチでわかりやすく示す施策は効果がある。 ■ 同調圧力の正体 太田肇 |
21 ピグマリオン効果
期待されることで成果が上がる効果。他人からの期待や予測は、自分自身の期待値を上げ、結果をもたらす。「先生に褒められた」「親に期待された」「上司によくされた」など期待から学習成績や仕事成果が上がる。教師期待効果、ローゼンタール効果とも呼ばれる。
この効果は、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールが提唱したと言われている。
よくいわれているのが、ノミの実験。小さなビンに入れられたノミは小さく飛ぶことしかできませんでした。しかし、大きなビンに移されたノミは同じ環境下にいる「ノミ」は周りが高く飛ぶことで、自分も高く飛べることを認識することができた。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?期待されることで成績が上がる。学校教育や企業の人材教育でも「期待する」ことで効果を発揮する。他者へ期待していることを言葉や文章にすることで認知させ、誘導する方法も使われる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 相手に期待したいことを誘導する ■ FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略 |
22 ゴーレム効果
期待していないことを伝えることで聞き手がネガティブな行動をとりやすくなる傾向。「あなたは成績が悪い」「できの悪い子」だと伝えられて育った人ほど「自分はできない奴だ」と思い込んでしまい、成績も伸びない。
期待してくれる人がいるからこそ、期待以上の成果を出すよう努力行動に移りやすい。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?ネガティブな言葉をかけられると「自分はできないもの」だと思い込んでしまう。単純接触効果のようにネガティブな情報に触れる機会が増えるほど、思い込みも深くなる。 逆にポジティブな期待をして成果を上げることを「ピグマリオン効果」という。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 洗脳 ☑︎ 労働者育成 |
23 自信過剰バイアス
「自信」があるからこそ正しい判断をし損ねる。人は、過去に経験したことや、慣れ親しんだことを宮丸傾向がある。「やったことがあること」「過去に成功したことがある」ような経験ほど、深く考えずに判断してしまう。
経験則から判断すると、決定のスピードが早まる一方、深く考えない分リスクを見誤ってしまうこともある。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?過去に経験したことをもとに自信が生まれる。自動車の運転やスポーツの試合など、経験値がある慣れていることほど判断を見誤ることが起きる。 投資や病気などリスクをあまく見積もってしまう傾向。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例有名なバットとボール問題がある。 この問題は、ノーベル経済学賞受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンとシェーン・フレディックの共同研究で実験された内容。実験では、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、プリンストン大学などの学生数千人を対象にしていた。 実験結果は、50%以上の学生が間違った答えを出した。一流と言われる超有名大学生でも半分の人が間違えるという話。 「正解は10円」と思ったあなたは直感タイプ。答えは10円ではない。ボールが10円なら、100円高いバットは110円になり、合計で120円になるため。 正解は5円。5円であることがわかった人も、直感で10円だと考えたはず。直感に何とか抵抗できただけという人がほとんど。 「これだ!」と感じる答えは、当たっているようで意外に間違っていることも多いという例。自分が自信を持って答えたのに、「思い込み」で考えて間違えるという話。直感は3割当たると言われていますが、逆にいうと、直感は7割の確率で外れる。 |
❏ 使い方 |
実例要するにみんな間違える。熟考したからと言って、100%正解を出せるわけでもない。当然、失敗もする。 全部正しい選択は、どこかで間違えるからこそ面白い。「みんな誰でも失敗する」と考える方が自然。 |
24 カリギュラ効果
カリギュラ効果とは禁止されるほどやってみたくなる心理。「ここから先は絶対に入っては行けない」「この箱は開けてはならない」と禁止されていることほど「その先が気になったり」「箱の中身を知りたくなる」あの感覚。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?「否定命令」とも言われ、相手を誘導するときのテクニックとしても利用されている。 たとえば、「お金を消費してばかりではダメだ」という文章を目にした人は 「確かに消費してばかりはよくないな」と賛意を示す人もいるでしょうし、「お金は消費してこそ存在価値がある」と異論を唱える人もいる。 しかし注目してもらいたいのは、賛成か反対かではなく、文章を読んで「相手にイメージを喚起させること」にある。多くの人は、お金を消費するイメージを思い描いたはず。 「消費するのはダメだ」というメッセージであるにもかかわらず、読み手の頭の中では、どうしても消費する自分像を思い浮かべてしまう。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 相手にして欲しい行動をイメージさせる |
❏ 使い方 |
実例相手を洗脳する文章テクニック 人の心を虜にし、思いのままに動かす 宮川明 |
25 アポフェニア
アポフェニアとは、無意味な情報のなかにパターンや関連性などの意味を考えてしまう傾向。
例えば、丸の中に点と線が描かれている絵を見て「何がか顔みたいに見える」と感じるあれ。
1958年にドイツ人心理学者のクラウス・コンラッドが統合失調症の患者の妄想経験とした造語がはじまり。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?パチンコに依存する人は独自の成功法則を編み出す傾向がある。例えば、お店に行く前に部屋を掃除して、塩を撒いて、神社へ行き、お供物をして入店するといったルーティン。 アポフェニアは無作為や無意味な情報から規則性や関係性を見出そうとする知覚作用であるが、本人は独自法則を信じてしまう。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例☑︎ 占い |
❏ 使い方 |
実例■ セレンディピティ 点をつなぐ力 |
26 カチッサー効果
何度も繰り返すことで結果として無意識にできるようになること。例えば、自転車に乗ることもカチッサー効果。初めて自転車乗ったとき、何度も躓いたり、転んだりするものの、何度も繰り返し練習すると「無意識に」自転車に乗れている。
また心理学では「過剰学習」とも言われている。プロのバスケ選手が何度もシュート練習をした結果、無意識に正確なシュートが打てるのと同じ感覚。繰り返し反復することで成功する。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?過剰学習は何度も反復させることで効果が生まれるものの、反復させるまでに大きな労力がかかる。カチッサー効果を実感するまでのハードルが高いからこそ、逆のハードルが低いサービスの販売が促進される。 「人は楽をしたい生き物」と言われるように、繰り返しの練習を嫌う。「達成したい」と思う目標があるにもかかわらず、目標達成とは「真逆」の環境にいる人がほとんど。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例例えば、ダイエットで成功した人をうらやむのも一つ。「私も痩せたい」と憧れるものの「楽をして痩せたい」「簡単に痩せられる方法を知りたい」と楽をしたいと考える。 |
❏ 使い方 |
実例■ セレンディピティ 点をつなぐ力 |
27 モーゼの錯覚
モーゼの錯覚とは、間違った思い込みのまま思考してしまう錯覚。選択肢の中での相対的な選好が、選択肢の他の要素によって影響を受ける心理的現象。
例えば「相手の名前を間違えたまま会話をしてしまう」ような行為。
選択肢の相対的な選好が他の選択肢や要素によって影響を受けるというもの。この現象は、行動経済学の分野でも研究され、消費者の選好に影響を与える重要な要因の一つとして注目されている。
「部科学省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構」国立研究開発法人 科学技術振興機構の「既有知識に反する誤りの学習の持続性」
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?過剰学習は何度も反復させることで効果が生まれるものの、反復させるまでに大きな労力がかかる。カチッサー効果を実感するまでのハードルが高いからこそ、逆のハードルが低いサービスの販売が促進される。 「人は楽をしたい生き物」と言われるように、繰り返しの練習を嫌う。「達成したい」と思う目標があるにもかかわらず、目標達成とは「真逆」の環境にいる人がほとんど。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例モーゼの錯覚は、商品の価格設定や商品ラインナップの工夫によって、消費者の選好を誘導することができる。例えば、あるスーパーマーケットでは、高価なワインと安価なワインを並べて販売している。この場合、高価なワインが売れないということはないが、安価なワインの売り上げが増える傾向が高まる。これは、高価なワインが存在することで、安価なワインが「お得」に感じられるから。 また、商品の価格帯を工夫することもモーゼの錯覚を利用した戦略。例えば、あるスマートフォンのラインナップには、低価格帯、中価格帯、高価格帯の製品がある。この場合、中価格帯の製品が一番売れることが多く、高価格帯の製品もそれなりに売れることがわかっている。 日本では「松竹梅戦略」とも言われ、中価格帯の製品が「コストパフォーマンスが良い」と感じられるため、高価格帯の製品も比較的高級感や高性能などの魅力を打ち出しても、中価格帯の製品との差別化があるために、選択肢としての存在意義を持つことができるからだとされている。 さらに、モーゼの錯覚は、商品の配置にも利用される。例えば、あるスーパーマーケットで牛乳とチーズを販売しているとする。牛乳とチーズを隣接する場所に配置すると、牛乳の売り上げが増えることが知られている。これは、チーズが牛乳よりも高価な商品であるため、チーズが牛乳の「価格を押し上げる」効果を持っているためだとされる。 ❏ |
❏ 使い方 |
実例個人が騙されない意識と使い方 また、広告やマーケティング戦略において、自分が選んでいるのは「相対的に優れた」ものであるということを意識することも必要。自分が求めているものと、提供されているものが一致しない場合は、冷静に判断することが大切。 |
30 スラッジ
スラッジとは、消費者にとっての負担や障害となる情報や手続きを意図的に設計することで、消費者の行動を変化させる手法。
スラッジは、「実践行動経済学 完全版」の著者、リチャード・セイラーさんが著書で述べている。他にも日本で最近出版された「スラッジ 不合理をもたらすぬかるみ」でもキャス・サンスティーンさんが解説している。
彼らの研究では、消費者が選択肢を選ぶときに、情報の多さや手続きの煩雑さなどが消費者の判断や決定に影響を与えることが示されている。
また、スラッジが実際にマーケティング戦略で利用されていることが、多数の調査や事例からも明らかにされている。
❏ なぜ効果があるのか? |
どう使われている?スラッジの具体例としては、キャッシュバックや割引などのキャンペーンなど消費者に手続きや条件を設けることが挙げられる。 |
❏ 実践マーケティング事例 |
実例割引の場合には、特定の条件を満たす必要がある。 あえて複雑にすることで行動を抑制したり、高いハードルを潜らせることで解約をしづらくさせる効果をもたせる戦略もある。 |
❏ 使い方 |
実例❏ 個人が注意すべきこと。 ■ 実践行動経済学 完全版 リチャード・セイラー、キャス・サスティーン ■ スラッジ 不合理をもたらすぬかるみ |